現役料理長が教える「春の会席料理献立集 」~料理屋さんの実情と既製品との付き合い方~

現役料理長が教える「春の会席料理献立集 」~料理屋さんの実情と既製品との付き合い方~
 

ライター紹介

宮城県在住/日本食料理屋で料理長を務める


春といえば色々な食材が出始める季節ですね。

菜の花空豆山菜新玉葱などのお野菜。白魚などの海産物。

そういった食材を散りばめた会席料理の献立集をご紹介していきたいと思います。

実際に料理に携わっている方は勿論参考に、そうじゃない方もこうやって和食屋さんは

献立を作っているのか、料理を作っているのか、というのも知ると食べに行った時より楽しくなると思います。

あと、料理屋さんの実情なども書いていきたいと思います。

コースの構成を考える

あくまで私の店舗での構成なので全てのお店でこうだ、という訳ではありません。

今回は自店の¥6000のコースを例題にしていきます。

まず冷たい先付から始まり、ご飯物のお凌ぎを序盤にお腹に入れて頂き温かい椀物で身体を温め、お造り焼物揚物でお酒を呑んで頂き、〆のお食事水菓子、温かいお茶と供に甘味をお出しして終わります。

先付

小鉢三品をワンプレートでお出しします。

・菜の花辛子浸し

・蛸と長芋梅肉和え

・新玉葱ロースト~蕗の薹味噌~

「菜の花辛子浸し」

①熱湯に塩を入れ菜の花を色良く茹で氷水に落とす。

②出汁10、薄口醤油1、味醂1を火にかけ沸かし、冷ます。

③茹でた菜の花を②の出汁に浸す。

④浸していた出汁をボールに適量取り、練り辛子を溶かし込む。

⑤器に菜の花を盛り④の出汁をかけて炒り胡麻をかける。

「蛸と長芋梅肉和え」

市販のボイルたこを食べやすい大きさに切って器に盛る。

②長芋は皮を剥いて細かく包丁で叩く①にのせる。

市販の麺つゆを出汁で割ったものを②にかけ、叩いた梅干しと刻んだ大葉をのせる。

「新玉葱のロースト~蕗の薹味噌添え~」

①蕗の薹を茹で水に半日さらす。

②鍋に胡麻油をひいてきつく絞った①を入れ炒める。

③ ②に合わせ味噌を入れ練って水分を飛ばす。

(合わせ味噌=赤味噌1kg、煮切り酒360cc、煮切り味醂360cc、砂糖350gを鍋で練り合わせる。常備しておくと非常に便利ですよ。)

④新玉葱を170℃のオーブンで50分焼く。

⑤切り分けて③を添える。

お凌ぎ

「空豆と海老の一口寿司」

①炊いたご飯に寿司酢を入れて酢飯をつくる。

(寿司酢=米酢1800cc、砂糖1300g、塩300gを火入れ)

②市販のいなり寿司の皮を刻んで①に混ぜる。

③茹でた空豆と海老を盛り付ける。

「あくまでお凌ぎなので一口で食べ切れる量で!」

椀物

「蛤とめかぶ~潮仕立て~」

①蛤をよく洗い、水と酒で沸かし殻が開いたら取り出す。

② ①のスープとかつお出汁を割って塩、薄口醤油で味付けする。

③椀に開いた蛤、刻んだめかぶ、白葱、木の芽をあしらい、②を注ぐ。

「出汁の香りが逃げないように注いだら直ぐに蓋をする!」

お造り

「旬の盛り合わせ」

(自店を例に)本鮪、真鯛、炙り鰆を主に使っています。

焼物

「めばるのグリル~海老クリームソース仕立て~」

ハインツアメリカンソースと生クリームを同量で鍋に入れ加熱し、塩、胡椒で味付けし、ボイルしてサイコロ状に切った海老を混ぜ込む。

②めばるは切り身にして塩こしょうしてグリルする。

③ ②とつけ添えを盛り①のソースをかける。

めばるは焼き過ぎるとパサついてしまうので注意する。

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揚物

「白魚と山菜の天麩羅」

白魚は1本ずつ、山菜を天麩羅にする。

ヒマラヤ岩塩を上から振る。

ヒマラヤ岩塩はミネラル分が豊富で塩味も柔らかいので天麩羅などに直接振りかけるのにいいですよ。


お食事

「手打ち蕎麦」

自家製の蕎麦つゆをつくる。

返し1:かつお出汁3を火にかけ沸かし追い鰹をして冷ます。

返し=濃口醤油9L、味醂9L、たまり醤油1.8L、赤ざらめ1kg、宗田節1kg、かつお節500g、干し椎茸300g、出汁昆布5本を火にかけ1日寝かし、漉す。

甘味 水菓子

フルーツと桜羊羹

季節のフルーツを使う。

写真は左がぽんかんと苺です。

①棒寒天1本を水でふやかす。

② ①を手でよく絞り水500ccで煮溶かす。

③完全に溶けたらグラニュー糖50g、市販の桜あん1kgを加えてよく練り型に流す。

以上が私の店の会席コースの一例です。肉料理に関しては値段によって強肴っていう形で出しています。

因みに強肴(しいざかな)とは、茶事にだされる食事(懐石)において

一汁三菜(飯・汁・向付・煮物・焼物)の後に出す料理をいいます。

強肴は、「進肴」(すすめざかな)、「追肴」(おいざかな)、「強肴」(しいざかな)、預鉢(あずけばち)、「進鉢」(すすめばち)などともいいます。 流儀によっても異なります。

料理屋さんの実状と既製品

ところで、なにか気付きませんか?ご紹介したコースの料理の品々の内、何ヶ所かに既製品を使ってます。

実際全てを手作りにしているお店さんもあると思います。少人数を相手にしてらっしゃる個人のお店さんもそうかもしれないですね。

ただ昨今、飲食店の人手不足は深刻で若い方も飲食店で働こうという方々も減っていますし、離職率も農林水産省が公開している資料によると、2014年3月の大学卒業者の就職後3年目までの離職率は、「宿泊業、飲食サービス業」で50.2%となっており、全産業平均の32.2%と比較しても大幅に高い数値となっています。我々飲食店側すると何とも寂しいですよね。

まあ離職率の話はこのぐらいにして、私がなにを言いたいかというと、当たり前ですけど、それでもお客様は期待感を持って御来店される訳で、我々は明日も明後日も店を開けて商売をしなきゃいけないんです。

ですので大人数のお客様を受け入れる上で、既製品の商品は必須となるわけです。

美味しくなかったら意味がない!既製品の使い方とバランス

上記のコース例でもわかるように私の店でも数品、既製品を使ってます。

ただ必ず味見をし、そこになにかを加えるとか一手間をかける様にはしています。

あくまで自分の店の料理であり責任は自分の店にあるからです!最近の既製品は一昔前に比べて格段にクオリティが高く、食品会社も「人手不足解消商品」と銘打って商品開発をしています。我々からしたら非常に助かりますし、便利な世の中になったと思います。

ただ便利、楽だからといってそういった商品に頼り過ぎるのも如何なものかとも思いますし、お店のオリジナリティお客様ファーストを忘れてしまうと結果的に客離れに繋がっていきます。

既製品の味や材料などの中身をよく理解し、使用していくのが大切です。

化学調味料の使い方、捉え方

私は化学調味料肯定派です。

ただこれも上記と同じでそのまま使うのではなく、味の底上げとして使うならということです。

例えばお味噌汁も昆布や煮干し、又はかつお節のお出汁に味噌を溶いただけでは大部分の方は物足らなく感じると思います。普段の食生活の色んなものに化学調味料が添加されていて、その味に慣れてしまっているからです。

私の普段の食生活も例外ではありません。ただ、もしお店でお出しする味噌汁を作るとしたら、そこに底上げとして私は「ほんだし」を少量を入れます。

お吸い物なら昆布とかつお節で出汁を取り、塩と酒、薄口醤油で味をつけ「味の素」で底上げします。お浸しの漬け汁も同様です。共通して言えるのは化学調味料だけで味をつけないということなんです!良質の昆布やかつお節でしっかり出汁を取った上で化学調味料を使うという事です。お客様からお金を頂く以上、家庭の味との差別化を図らなくてはいけません。

まとめ

駆け足で簡単なレシピや実状などを書いてきました。人手不足や原材料の高騰など一昔前に比べたら飲食店の置かれる環境は厳しくなっています。

ただ、お客様は美味しい料理、楽しい幸せな時間を味わいにご来店されます。我々提供者はそういったお客様の存在で成り立っているということを根底に置かなければいけませんね。