知っているようで知らない潜水艦の話 北朝鮮と潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)

知っているようで知らない潜水艦の話 北朝鮮と潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)

昨年、北朝鮮は潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)に成功したという報道を行いました。

これには専門家から色々な疑問の声も上がっていますが、そもそも何故、北朝鮮は潜水艦から弾道ミサイルを発射する事にこだわっているのか、はあまり知られていません。

実はこれには深い事情があるのです。今や「核保有国」を主張する北朝鮮ですが核ミサイルと潜水艦は現代の軍事事情では切り離せない物だからなのです。今回はその辺りの事情をご説明してみましょう。

潜水艦は最強の武器

水中に潜ることが出来る潜水艦は実は「最強の武器」なのです。潜水している潜水艦を撃沈する事は、ほぼ不可能と言われる位に難しい事なのです。例えば飛行機やミサイルなどの空を飛ぶ物はレーダーで見つける事ができます。そして地対空ミサイルや迎撃ミサイル、戦闘機を使って迎え撃つ事もできます。ところが水中では電波が通らないので潜水艦をレーダーで見つける事は出来ません。では、どうやって見つけるのか、というと方法は3つしか無いのです。

1:ソナーを使って見つける

ソナーとはいわば「音を探知する」装置で、これで潜水艦を見つける、という方法です。潜水艦の音とはスクリュー音ですが、全ての潜水艦のスクリュー音は、それぞれの個性を持っていて音を分析すれば、これは米国の何と言う潜水艦だ、とか日本のくろしおだ、とか断定できるのです。自軍及び友軍のスクリュー音データがあれば、それに合致し無い物は敵軍と判断できるので、対潜哨戒機と言う潜水艦を発見する事を目的とした哨戒機は海の中にソナーを投入し音を探知する設備を搭載しています。しかし実際には、これで潜水艦を見つける事は非常に難しい事なのです。海中には波や海流や魚や海生生物による音が絶えず発生しており、その中から潜水艦のスクリュー音だけを拾うことはできないので「相当に近く」にいない限りソナーで潜水艦を発見する事は出来ないのです。

2:磁気探知装置を使って見つける

船もそうですが、鋼鉄製の物体を海上、海中で走らせていると地磁気という物を拾ってしまい磁性を帯びてきます。つまり「磁石化」してしまう訳です。ですので、磁気探知機を使って潜水艦を見つけようという方法です。対潜哨戒機は必ず、この磁気探知装置を搭載しており、これが最も「見つけやすい」方法です。潜水艦は定期点検の時にワイピングという消磁作業を必ず行いますが、これは磁気探知を逃れる為に行われる作業です。ですので、対潜哨戒機はまず、磁気探知装置でどっかに磁気を帯びた物はいないかを探し、発見したらソナーを海に投入して音を探る、という手順で潜水艦の発見をしようとしているのです。

3:海上に浮いている所を目視で発見する

第二次世界大戦でドイツ軍が誇ったUボートは、連合国の戦艦にとって脅威でした。

当時は磁気探知装置が無かったのでソナーだけで潜水艦を発見するしかなかったのですが、相当に近づかないとソナーで発見する事はできないからです。つまりソナーで発見された時は既に「すぐ近くまで来ている」訳で、先制攻撃を受けるのは必至だからです。

ですが、Uボートにも弱点がありました。Uボートはディーゼルエンジンでスクリューを回しており、かつ決して大きくない艦体は長く潜っていると艦内の空気から酸素が無くなってしまい、二酸化炭素だらけになってしまうからです。ですので、一定時間、潜ったら換気浮上と言って換気の為に浮上せざるを得ないのです。この換気浮上の時なら、いくらでも攻撃のしようが有り、実際にUボートを撃沈するには換気浮上の時を狙え、というのは当時の戦艦にとっては常識でした。しかし、これも現在の原子力潜水艦には通用しません。なぜなら原子力潜水艦は原子炉を搭載しており電力が豊富にあります。その電力を使って海水(つまり水)から酸素を取り出す事が出来るので換気浮上の必要が無いのです。現在の原子力潜水艦はやろうと思えば一年間くらい潜ったままでも大丈夫です。ですので、現在ではこの方法は実用的ではありません。

つまり潜っている潜水艦を見つける事は非常に難しい事なのです。しかも、発見したとしても、まだ問題があるのです。

潜水艦を撃沈する方法

潜水している潜水艦を発見したとしても、それを攻撃する方法は限られています。

戦艦から攻撃する場合は爆雷を投下する、という方法が一般的ですが、これはあまりに命中率が低く効果的ではありませんでした。ちなみに二次大戦では高射砲という地上から飛行機を攻撃する大砲がありましたが、高射砲で撃った砲弾が飛行機に命中する確率は5000発に1発、位で「ごくごくたまにしか当たらない」のですが戦艦から水中に爆雷を投下するのも同じ位の命中率しかないのです。

あとは機雷と言って「触れると爆発する」物を海中に投げ込む事も出来ますが、投げ込んだ機雷が、その後どうなるかは「成り行きまかせ」ですので、これが後に海岸に漂着して爆発事故を起こしたり(昭和17年の湧別機雷事故、昭和24年の名立機雷爆発事件等)自軍の戦艦に当たってしまったり無関係の客船に当たってしまったりする事もありましたので(1945年 浮島丸事故、大成丸事故、珠丸事故 1948年 女王丸事故等)一体、何をやってるんだか訳が分からん、という事になってしまうのです。もちろん大砲や重機関銃などの通常兵器は海中の敵に対しては全く通じません。

そこで第二次大戦中に英国軍はヘッジホックス、スキッドという対潜用迫撃砲を開発し、ある程度の効果を収めましたがUボートと現代の原子力潜水艦では潜行能力に大きな差があり、多きな水圧がかかる深い場所では迫撃砲は水圧で潰れてしまい意味を持ちません。

ならば魚雷という物があるだろう、という方もいらっしゃるでしょう。

実際、対潜哨戒機は魚雷を搭載しており、いざという場合には、それを発射する事もできます。また近くに自軍の潜水艦がいれば、その潜水艦から魚雷を発射してもらう、という手もあります。一般的なイメージとして「魚雷」というのは狙った所に行くのだろうと思っている方が多いと思います。ですが魚雷というのは撃ったら「後の行き先は魚雷に聞いてくれ」という位に制御が利かない武器なのです。要は爆弾に小さなスクリューを付けただけの物ですので、ある程度の距離をまっすぐに進ませるのが精一杯でスピードも遅いのです。

途中でマグロやイルカに当たったら「それまで」ですし、離れた場所から撃つと、到達前に相手の船が前に進んでしまい、後ろを素通りしてしまいますし海流に流され方向を変えられてしまったりする事もあります。ですので、潜水艦から魚雷を発射して敵船に命中させるコツは「とにかく少しでも敵船の近くで撃つ事」なのです。

あまりにも制御が利かないので「誘導式魚雷」「熱探知式魚雷」なども研究されてきたのですが海中という場所は邪魔物が多く電波は通らないし熱は伝わりにくいので、これらは全て失敗しています。唯一、「音波探知式魚雷」「音波誘導式魚雷」というのが比較的高い命中率を持っており現在では、こういった誘導式がメインですが、これらの仕組みは、どこの国でも「最重要機密事項」で具体的な仕様は分かりませんが、中には「有線式」といって撃った魚雷にケーブルがついておりそれで誘導する、という仕組みも開発されているそうです。

しかし戦艦にとって魚雷を搭載するのは「甲板上に強力爆弾が無防備に置かれている状態」で、飛行機から機銃掃射を受けたら大爆発してしまいます。事実、二次大戦中には甲板に置かれた魚雷を攻撃されたり、間違ってショックを与えしまい大爆発を起こし轟沈してしまった戦艦が続出しました。漫画や映画でよく潜水艦同士の魚雷の撃ちあい合戦というのがありますが、実戦では、これまでに行われた事実はほとんど無く、僅かに1回だけです。それも、どちらも当たらず、すぐに諦めて双方、引き上げて終わりという結果になっています。魚雷というのは、えらく高額な武器なのに、これほどに「頼りない武器」なのです。

つまり潜水艦は見つけても、攻撃して撃沈させる事は、ほとんど出来ないのです。

しかし、そうも言っていられないのでミサイル式で上に打ち上げて潜水艦のいそうな所に落下させる対潜ミサイル、という物も開発され実戦装備もされていますが、未だにこれで撃沈に成功したという例はありません。

しかし仮にこれらの攻撃が成功し潜水艦が撃沈された場合、もし、それが原子力潜水艦であると最悪の場青、核爆発が起こる可能性もありますし少なくとも周辺一帯が放射能汚染の危機にさらされる事は間違いありません。そうなると海上の戦艦もただでは済みません。ですので、へたに攻撃もできない、というのが実情なのです。潜水した原子力潜水艦というのは、かように厄介な物な代物なのです。

潜水艦側の攻撃能力

これほどに有利な立場の潜水艦ですが、持っている攻撃能力は「魚雷」と「ミサイル」だけです。こんなに有利な立場なのに水中という条件で使える武器は当たるかどうか分からない魚雷だけなのです。ミサイルの発射では、一旦、海上まで浮上する必要があり、そこを見つかったら通常攻撃を受けてしまうのでミサイルは簡単には撃てません。

潜水艦の現在の役割

しかし「見つけにくい」「見つけられても撃沈されにくい」という性質は思わぬ用途に適していました。それが「核ミサイルの搭載」です。隠密に移動が出来、気づかれずに敵の近くに接近できる潜水艦は「核ミサイル」の搭載にはもってこいだったのです。

そこで現在では米国初め、核保有の先進国は原子力潜水艦にSLBMという核ミサイルを搭載させており、それが、今、どこにいるかは全く分かりません。原子力潜水艦が核ミサイルを搭載するようになってから、それまでの地上のミサイル発射基地は次々と廃止されていきました。地上の発射基地は狙い打ちされたら、それまでなので返って危ない存在でもあるからです。

つまり現在では「核ミサイルを持っている」というだけでは不十分なのです。事実、地上発射基地ではトマホークなどの巡航ミサイルで狙い打ちされたら、それまでです。

攻撃を受けたミサイル基地は、うまくすれば核爆発を起こしてくれるので敵国側から見ると「効果絶大」でも有る訳です。既に米軍は北朝鮮のミサイル発射基地を全て調べ上げ、いつでも巡航ミサイルで攻撃できる準備を完了しているという話も伝わってきています。米軍にはラクロスという軍事用監視人工衛星があるので、それは容易な事なのです。また地上基地からの発射は弾道計算によりコースが確定するので迎撃しやすいのです。

北朝鮮が潜水艦からのミサイル発射にこだわっているのは以上のような事情があるからなのです。

最後に

このように原子力潜水艦は現在では「最後の切り札」的存在になっている訳ですが北朝鮮が仮に原子力潜水艦を作り核ミサイルを搭載させたとしても、果たしてそれが、どれ位安全な物かは分かりません。万一、事故でも発生したら大変な事になります。

旧ソ連時代の1968年3月にK-219というソ連の原子力潜水艦が核ミサイルを搭載したまま、ミサイルの発射口付近で火災が発生しシーリングが破損し海水が流入してきてしまったという事故がありました。ミサイルに充填した液体燃料は不安定な物質で海水と化学反応を起こしますが金属疲労でミサイルサイロ周辺に極小の穴が空き、僅かに海水が入ってしまったのです。その海水がミサイルサイロの水受けに入り。これまた劣化していた燃料タンクから僅かに漏れていた四酸化ニトロゲンと言う物質と化学反応を起こし硝酸となり周りの物を溶かし始め火災を起こし、海水の流入と硝酸の発生が一気に加速し始めました。さらに硝酸は毒ガスである硝酸ガスとなり艦内に充満し始めました。K-219は艦齢15年の老朽艦だったのです。

K-219は二基の原子炉を搭載しており二基とも稼働中での出来事でした。このままでは原子炉が破損しメルトダウンを起こし最悪の場合、核爆発が起きてしまうという状況にまで追い込まれました。既に原子炉室内では放射能が漏れ始めており、入ったら死んでしまいかねない状況でしたが決死の覚悟で突入した19歳の水兵が制御棒を押し込み原子炉を止める事に成功しました。しかし、その19歳の水兵は被爆で数秒後に死亡してしまいます。もし、彼が決死の覚悟で突入してくれなかったら16発(一説には34発)の核弾頭を搭載していたK-219は、これまでに無い超大規模核爆発を起こしていた可能性もあるのです。

そうなったら、世界は一体、どうなっていたでしょうか。地球が放射能汚染された大気で覆われてしまう可能性すらあったのです。K-219は今でもバミューダ海の水深5000mの海底に沈んでいます。1988年にソ連の海底探査船ケルディッシュが沈没したK-219が正立状態で海底に沈没しているのを確認していますが、ミサイルハッチはこじ開けられており、ミサイルも核弾頭も消えていたとの事です。なんにしても恐ろしい話です。

潜水艦の寿命は短く10年を過ぎればK-219と同じ老朽艦なのです。北朝鮮はそんな物を作ろうとしているようですが、完成以前に政治的な解決が図られん事を祈っています。

最新の記事↓

タグ一覧↓

すまい給付金 イギリス ウイルス ジブリ スピリチュアル スポーツ バイアス メンタルトレーニング 不動産投資 住宅ローン減税 切手 動物占い 北朝鮮 営業の見える化 営業マンの交渉の極意 営業マンの売れる極意 営業マンの売れる話し方の極意 営業マンの契約する極意 営業手法 弾道ミサイル 授業 教え方シリーズ 映画 潜水艦 相手にしゃべらせる質問術 知ると面白い 細菌 自動化営業法 豊かになるお金の話 除毛 音楽 龍涎香