知っておきたい 正常性バイアスの世界

知っておきたい 正常性バイアスの世界

随分と前ですが九州の雲仙普賢岳で噴火が起こり火砕流という物が発生し周辺一体を焼き尽くすという災害が発生した事がありました。

それから暫くして、いしいひさいち氏が以下のような4コマ漫画を某紙に発表しました。

消防団員 ほれ。じいさん、早く逃げねば。

じいさん (柱にしがみついて)わしゃここで死ぬんじゃー。

で、消防団員がじいさんを無理やりひっぺがして一時避難所に連れて行きます。

そして仮設住宅が出来、そちらに移ろうとしたら

じいさん (避難所の柱にしがみついて)わしゃここで死ぬんじゃー。

ばぁさん あーあーもー死になはれ

果たして、いしいひさいち氏が実話を元にこの話を書いたのか、豊かな想像力で書いたのかは知りませんが、この話を聞くと、なんとなく「ありそうな話だな」と思いませんか?

また統計データとして証明されている物として東北大震災の時に大津波が迫っており緊急避難警報が出ているのに、全く避難行動を起こさず、そのまま津波に飲み込まれて死んでしまった人が沢山いた事が分かっています。中には、近所の人から「早く逃げないと津波が来るぞ!」と声をかけられていた人達もいた事が分かっています。一体、なぜ、これらの人達は逃げなかったのでしょうか?

こういった心理傾向を正常性バイアスと呼んでいます。 少し正確に説明すると「日常生活における変化を受け入れず、現状維持を希望し、かつ現状維持されるであろう事を根拠無く信じる心理傾向」です。つまり大津波が迫ってきているけれど「まぁ、大丈夫だろう。きっと大した事ないさ。これまでも大丈夫だったし」と考えて避難行動をしなかったという訳です。今回はこの正常性バイアスについてです。

なぜそんな心理傾向があるのか?

存在するには必ず何らかの理由が有る物です。一例としてアフリカのサバンナにおけるライオンとシマウマの関係を考えてみましょう。

シマウマとしてはライオンに出会ったら殺されて食べられてしまう可能性が有りますからライオンは恐い存在です。そして、いつライオンに襲われるか分からない訳で、常に危険な状態に置かれているといっても過言ではありません。しかし、だからといって常に恐れていたら食事も出来ないし繁殖もできません。だから実際にライオンを見ない限り、迫り来る危険を感じる事はありません。

これを人間に移し変えてみましょう。実は人間だって日常生活をしている時には色々な危険が常に付きまとっているのです。いつ心筋梗塞が起きるかもしれない、空から飛行機や隕石が落ちてくるかもしれない、覚せい剤中毒者が狂って襲い掛かってくるかもしれない、考えたらキリが無い位の危険要素が常に周りに存在しているのです。しかし、それらを恐れていたら日常生活は送れません。もし、あなたが朝、会社へ行く時に奥さんが「何があるか分からないから念の為に水筒に水を入れて持っていって。もしかしたら急激な気候変化で深刻な水不足になるかもしれないから」と言ったらどうしますか?

「そんな事ある訳ないだろう。考えすぎだよ。じゃ行ってくるよ」と言って出かけてしまうでしょう。この「そんな事ある訳ないだろう」というのは実は正常性バイアスが言わせている言葉なのです。なぜなら、本当に奥さんの言う通りの事が今日、起きるかもしれないからです。そして、それを否定する根拠は何もありません。ただ単に「これまで生きてきてそんな事は一度も無かった。だから今日も無い」と根拠なく信じているからなのです。

そしてほとんどの場合、「そんな事」は起こりません。だから「ほら、大丈夫だったろう? 考えすぎなんだよ」と自分の考えが正しかった事が証明された、と自分で信じ込みます。こうやって正常性バイアスは、どんどん強化されていくのです。そして一般的に見れば、確かに奥さんの方が「考えすぎで少し病的な感じ」がします。つまり正常性バイアスは日常生活を過ごす為には便利であり必要な心理傾向なのです。実際問題として、身の回りに考えられる危険を常に恐れていたら何もできませんから。

常性バイアスの短所と対処法

かように我々が日常生活を送るのに便利であり必要でもある正常性バイアスですが、どんな物にも長所と短所があります。その短所の最たる物は冒頭でも述べた通り、本当に危険が迫っている時に「そんな事ある訳ないだろう」と現実を受け入れない事です。その結果として危険回避行動を取らなくなってしまうのです。では、そういった場合にはどういう対処をすれば良いのでしょうか?

シマウマは実際にライオンを見たら逃げ出します。それと同じで「迫り来る危険」を実際に見せて本人に確認させれば良いのです。しかし大津波の場合もそうですが、本人がそれを自分の目で確認できる状態になった時は、もう既に手遅れである場合がほとんどです。

つまり根本的な対処法は「無い」のです。比較的、効果のある方法は「正常性バイアスという心理傾向があり、それはこういう物である」という事を事前に知識として知っておき、万一の場合、「これはもしかしたら正常性バイアスか?」と本人が疑ってみることが出来る可能性を残しておく事です。それには、もう少し正常性バイアスという物がどういう物かを深く知っておく必要があります。

正常性バイアスの生成過程

8歳位の子供に「地球の周りには小惑星というのが沢山有って、いつ地球にぶつかるか分からないんだよ。そしてぶつかったら皆、死んじゃうんだ」と教えたとします。この事、事態は事実です。そして、それを聞かされた子供は物凄く恐がるでしょう。

しかし同じ事を50歳のおじさんに言ったとしても「らしいね。でもまぁ大丈夫なんじゃないの? 少なくとも俺が生きているうちはさ」と答えるでしょう。つまり正常性バイアスというのは日常生活を送ってきた時間が長ければ長いほど強く働くのです。なぜなら「大丈夫だった経験が長い」から正常性バイアスが、より強く効いている訳です。年寄りほど変化を嫌う傾向にある、というのは実は、この正常性バイアスの効きすぎ、で有る事が多いのです。

例えば何かうまくいかない事があったとします。それを別のやり方でやったら、うまくいった、という経験をすると、「こういう場合はこうやればいいんだ」という知識が身につきますが、それが行き過ぎると「これをやる場合は、こうやらなきゃダメだ」という所まで行ってしまうのです。実際には、別のやり方でやれば「もっとうまくいく」かもしれないのに、です。周りの人から見ると「頑固な人」と見えてしまうでしょう。

これが極端な所まで行くと、外出する時は常に同じ道を通り同じ店に行き同じ物を買う、という所まで行ってしまう人もいます。特に判断力が低下してきたお年寄りには強く見られる傾向で「俺はこうする事に決めているんだ」と絶対に譲りません。なぜなら、その行為をする事、それ自体が、その人にとって「生きている証」となっている事も多いからです。言ってみれば「思考の柔軟性の欠如」とも言えるので、正常性バイアスは思考力の弱い人ほど、より強く働くという事も言えそうです。人間の思考力、判断力というのは経験よりも知識の有無で左右される事が多いのです。

正確な知識を持っている人は、より正確な思考をして、より正確な判断を下す事ができますが、知識が無いと経験しか判断材料が無く、その結果、正常性バイアスと言う心理傾向から抜け出す事が出来なくなってしまうのです。よく「人間、死ぬまで勉強だ」という人がいますが、確かにその通りなのです。なぜなら知識というのは常に更新されている物で、どんどん進歩していく物だからです。また、もう1つ重要なのが哲学的思考です。「諸行無常」という言葉は「全ての物は同じ状態で続く物ではない」という意味ですが、始まりがあれば必ず終わりがあるのです。非常に確実な話をすれば太陽の寿命はあと50億年であり赤色巨星となり、その後は白色矮星となり一生を終えます。そして、その段階のどこかで太陽は大きく膨張を始め太陽系をほぼ飲み込んでしまう大きさになりますが、その時に地球は太陽に飲み込まれ消滅します。もし、その時点で地球上に人類が生息していれば、別の宇宙に行っていない限り、確実に滅亡します。残念ながら「巨人軍は永遠に不滅」ではないのです。

「始まりがあれば、必ず終わりが有る」という事を知っているだけで、きっと生き方も変わってくるでしょう。そうなると「明日も今日と同じだろう。いや同じでなければならない」という考えが「そうではない」事を悟らせるきっかけとなってくれるかもしれません。

正常性バイアスというのは「生きるための知恵」ですが、知っているのと知らないのでは、かほどにも違う物なのです。

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